「何故だ、何故アンパンマンは私と戦おうとしない…!」
力任せに、ロールパンナは岩を殴りつけた。
ロールパンナがいくら嗾けても、最初こそ応戦するものの、いつも最後には戦えないの一点張りのアンパンマン。
そこにばいきんまんがいれば、今がチャンスと自分で手をかけるか、またはロールパンナに倒すよう言うのだが、戦意のない者を滅多打ちにするのは彼女の求めている勝敗のつけかたではなかった。
正々堂々と、真っ向から、全力で、誰にも邪魔されることなく、徹底的に壊しにかかりたい……!
怒りと、今日もまた彼にぶつけ損なった破壊衝動を拳に乗せて、ロールパンナはもう一度岩を殴った。
「あーっ!」
そんな気の立っているロールパンナの頭上で声があがる。
見上げると、こちらを見下ろすしょくぱんまんと目が合った。 驚いたような表情を湛え、彼女のすぐそばに降りてくる。
こんなところで会うとは、珍しい。ロールパンナはちらりとそう思う。
しかしこいつは割とどうでもいい。 ………はずだったのだが。
「ロールパンナちゃん。ひとにはもちろん、自分にだって乱暴しちゃだめですよ。その白魚のような繊細な手をむやみに傷つけてはいけません。女の子はみんな野に咲く一輪の花のように、愛されてなんぼなんですから」


ぞ わ わ っ !


「や、やめろ、はなせぇええ!!」
彼女のずたずたに傷ついた右手をはっしと両手で掴み、二度と痛めつけることのないようにしっかりと捕まえたまましょくぱんまんはそう言った。
鳥肌を立ててロールパンナは叫ぶ。左手で握られていたリボンがぼきんと折れた。