そっと片手を握られて、カレーパンマンは思わず身じろいだ。
ただでさえ狭いソファーの上で隣同士に座っていたのを、しょくぱんまんが更にこちらに体を寄せてくるにつれて腰が引けそうになるのをなんとか耐え、緊張で体をがちがちにしていると、
「あなたはこっちに集中していてください」
という声と共に、握った手に視線だけを流す。
素直にそれに従って、しょくぱんまんの手をぎゅうぎゅう握って気を紛らわせようとする。
しかし、
「ねえ、カレーパンマンの耳ってどこにあるんですか?」
「へん?」
唐突にそう聞いてくるものだから、間の抜けた声を上げてカレーパンマンはしょくぱんまんの方を向いた。そして至近距離にある顔にぎくりと体を固くさせる。
「ええ、なんて、みみ?」
しどろもどろになりながら聞き返すと、しょくぱんまんは至極真面目な表情で頷いた。
「さあ、ちょっとわかんないな」
「じゃあ探しましょう」
「さが…」
何を言っているのか解らないカレーパンマンに聞き返す隙を与えずに、しょくぱんまんは彼の頬を唇で食んだ。
「いっ、いきなり…」
「しーっ」
抗議を発するふにゃふにゃの唇にしょくぱんまんは人差し指を立てて、雰囲気もへったくれもない声を、しかるべき所を発見した時のために封印する。
カレーパンマンが何か言いたそうなのを我慢して唇を固く結ぶのを見てから、しょくぱんまんは手を下ろした。
はくはくと、カレーパンマンの輪郭をなぞって甘噛みしていく。
茹で上がった卵を摘んだように小さく震えていたカレーパンマンは、ある一点を食まれ、急に肩を跳ね上げた。
「ぅわっ!」
「みーつけた」
カレーパンマンの戸惑いを打ち消すように楽しげに、しょくぱんまんはそこに舌を這わせる。
「お、おい、しょくぱんまん!」
わたわたとカレーパンマンが繋がれていない方の手を振るが、しょくぱんまんは一々聞かない。振りまわされている手もがっちりと掴んで、カレーパンマンの膝に押し付ける。
舌を尖らせてつついたかと思うと、今度はべろりと舐められて、カレーパンマンはみるみる内にひるんでいった。
「ふええ、ちょ、ちょっと……!」
繋がった両手を振りほどこうとじたばたするが、
「カレーパンマン、抵抗するんならもっと本気を出さないと」
仕方ない照れ屋さん、とでも言うようにしょくぱんまんは朗らかな笑顔を浮かべたが、カレーパンマンからはそれは見えなかった。
何故ならその台詞はカレーパンマンの耳に直接吹き込まれ、そうでなくても観念した彼はぎゅうっと目をつぶったところだったから。